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試作から製品へ─設計と製造のあいだにある“見えない壁”

  • 執筆者の写真: iidapiano
    iidapiano
  • 1 日前
  • 読了時間: 2分

試作は“できること”が多すぎて、量産は“守るべきこと”が多すぎる。

ヘッドホンの開発において、試作はほとんど無限の自由をもたらします。 カスタム部品、手作業による微調整、仮組みでのその場しのぎの構造調整……それらによって、「良い音」は比較的容易に作れてしまう。


しかし、そこから「何度でも同じ音を出せる製品」に仕立てる工程で、真の試練が始まります。 設計と製造のあいだには、「設計と製造を分かつ巨大な壁」が存在します。


私たちKuraDaは、まだ何千台・何万台というスケールの量産を手がける段階ではありません。 それでも創業当初から、「量産できること」を設計の要件に組み込んできました。


試作段階であれば、仮部品、ラフな寸法、応急的な調整で“音”を仕上げることができます。 けれど、それでは製品にならない。

試作では成立していたものが、製品では通用しません。

耐久性、組み立てやすさ、歩留まり、快適性──

音だけでは語れない“使う人のための設計”が、そこに必要になります。


「良い音の試作ができた」だけでは、開発は終わりません。 同じ音を、同じ構造で、何度でも再現できるようにしなければならないのです。

そのために、私たちは次のような翻訳作業を行います。

  • 手作業で合わせた勘所を、ミリ単位の寸法として図面化する

  • 音の響き方に一貫性を持たせるため、素材の剛性や密度を見直す

  • 最終組み立てで「調整しなくても鳴る」ための公差設計を行う


量産とは、単なるコスト効率化ではありません。

一度だけ出せた“理想の音”が、実世界で”100台” ”200台”と、どこまで同じように再現できるかという、設計思想そのものへの試験なのです。

だから私たちは、「自分のための1台」ではなく、「誰かの手に渡る100台」に音を届けることを、いつも考え続けています。


試作と製品は、まったく別の生き物。

それでも私たちは、再現できる理想を目指して、設計と製造の両面からものづくりに取り組んでいます。





 
 
 

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